Su-30

Su-30はSu-27UB複座練習機を元に作られたダンデム複座型の戦闘機で、原型機はT-10PU-5、T-10PU-6 (Su-27PU)です。Su-27との主な違いは同じレーダーながらTWS(複数機追尾)能力が付加され、空中給油プローブを持ちます。

そのSu-30をマルチロールファイター化したのがSu-30Mです。Su-30MはSu-27の空中戦能力を一切削がずに強力な対地攻撃能力、主にKh-25,Kh-29,Kh-31,Kh-41,Kh-59といった誘導爆弾や様々な対地ミサイルの運用能力が付加され(Su-27でも運用は一応可能ですが)、グラスコックピット化されています。
また、Su-30Mにカナードが付けられ機動性が向上されたバージョンがSu-30MKであり、輸出が盛んで現在もっともホットなフランカーであります。また、バージョンによってはAL-31FU、3次元推力偏向エンジンを装備しております。

 
(Su-30M前後席)

Su-30は主にMiG-27を代替する目的で設計され、複座の戦闘攻撃機とすることにより確実性を高められています。F-15A/Cに対するF-15Eと言えるでしょう。しかし皮肉なことにロシア空軍自身は予算の不足により殆ど機種の更新が出来ない状況であり、Su-30は専ら輸出専用機としての存在価値があります。
また、Su-30はフランカーシリーズの特徴である相互データリンクにおける管制を行う能力を持ちます(データリンク項参照)。Su-30は、今後フランカーの主流となるでしょう。

そのため輸出仕様のSu-30MKの売り込みも順調で中国とインド、インドネシア、マレーシアなど、300機の契約が締結済みです。


Su-30は極めてバージョンが多岐にわたります。その中の採用済みの主な物を挙げます。

Su-30MKI

1997年に初飛行、1998年から配備が開始されたインド向けのSu-30MKIは、Zhuk-PH N011フェイズドアレイレーダーを持ち、またSu-37で培われた推力偏向ノズルをさらに進化させたAL-31FPおよびAL-37PPをもち、3次元推力偏向能力をもちます。このことにより世界初の3次元推力偏向エンジンを持った実用戦闘機となりました。恐らくはSu-30MKIはSu-37の機動性を上回るでしょう。
また2001年、ライセンス生産契約が結ばれておりヒンドスタン航空株式会社(HAL)により2004年より20年間で140機が生産されます。なお、MKIに先立ちSu-30Kが8機輸出済みであり、これらも改修を受けてMKI化します。

インド海軍では現在固定翼用の空母をロシアから輸入するのことが決定しており(ロシア名アドミラル・ゴルシコフ)、もしこれが決定されたならば、Su-30MKIは艦載機としての改修を受け運用される可能性があります。

Su-30MKM

マレーシア向けのSu-30MKMはほぼSu-30MKIと同等のハードを持ちますが、アビオニクスの一部に同国向けの改修がなされています。なお同国は他にMiG-29及びF/A-18を装備。
また、代金支払いの一部を椰子油の援助によってまかなわれます。

Su-30MKK

中国向けのSu-30MKであり、第1期契約分及(Su-30MKK1)び第2期契約分(Su-30MKK2)のおよそ76機が既に引渡し済み。2003年には40機の第3期契約(Su-30MKK3?)が調印済み。もっとも大きなSu-30契約です。

うち一次契約分の最初の26機はSu-27と同様ながらTWS能力を持つZhuk-27 N001VEレーダーを搭載。残りの全ては、Zhuk-PH N011フェイズドアレイレーダーを搭載しています。なお26機は同様の改修が行われる見通しです(既に改修済みか実行中?)。
また、注目すべきはSu-30MKK2に搭載するM400偵察ポッドであり、100Kmの視程で2mの分解能をもつ空対地レーダーSLAR(航空機搭載マイクロ波映像レーダー)機能、30cm-40cmの解像度を持つFLIR/可視光カメラ、さらにこれらをデータリンクで地上管制にリアルタイムで送信する能力を持ちます。またこのSu-30MKK2はおよそ10機のSu-27/Su-30による相互データリンクを管制することが可能です。
恐らくは現時点もっとも高性能なハードを持つフランカーはSu-30MKK2でしょう。しかし、推力偏向ノズルは搭載されていません。

90年代後半より中国は主力であった1000機を超すMiG-19(J-6)が年に100機単位で退役しており、強力な軍隊の象徴になりつつある近代化空軍を目指し、質の向上を図っています。そのために導入されたSu-30MKKは、同国に初の多目標同時攻撃、精密誘導爆弾、スタンドオフ空対地ミサイル、対レーダーミサイル、といった装備と能力をもたらし、当然この能力はIAIラビが原型とされるJ-10、やや旧式化しつつあるJ-11(Su-27)、最新鋭の低コスト戦闘機FC-1、いまだ不透明なJ-12(中国産ステルス戦闘機?)など最新機に対し同様の能力を持たせるとみられています。
(しかし、まだ大量の旧式機が残っているのにこんなに多くの機種を運用して大丈夫なのか…?)

また、そしてイギリスのサーチウォーター、及びイスラエルのファルコムの両警戒レーダーシステムを搭載したY-8及びIL-76などのAEWの運用を目指していましたが、アメリカにより阻止されたため、その代替処置としてA-50メインステイの導入が決定されています。
現在の中国空軍はまだ発展途上的な二流空軍でありますが、将来的にはA-50や他の作戦機との一体化したデータリンクを用いた高度な一流空軍になりえるポテンシャルを秘めています。Su-30MKKはただの機種更新ではなく、その楔となるべき役割を担います。またライセンス生産(予定)を含め500機程度が調達される見通しです。恐らくライセンス化されたSu-30MKKはJ-13となるでしょう。

なおSu-30MKKに推力偏向エンジンが搭載されていないのは、ロシアは中国に対し潜在的な脅威から航空技術格差に10年以内の差をつけないようコントロールしているとされ、その航空技術の核となるエンジンにおいてこのような差をつけていると推定されます。
脅威に思えるなら、技術の流出を引き起こす輸出自体を行わなければ良いはずですが、さしたる産業がなく、カネのないロシア政府にとって、戦闘機ビジネスこそが外貨を得る最大の手段であり、そのようなことを言っていられない状況なのです。


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