スロットバックレーダー
Zhuk-27 N001レーダーは現在ロシアに配備されているSu-27が最も多く装備しているレーダーで、最も古い部類にはいります。
走査範囲はアジマス90(左右45度)、エレベーション+55
-45(上55度下45度)の走査範囲を持ち、探知距離は最大で250Km、同時に10目標を探知(RWSモード)でき、うち1目標を追尾(ロックオン)することができます。
同世代のF-15(AN/APG-63もしくはAN/APG-70レーダー)は最大探知距離300Km24目標探知8目標追尾(TWSモード)と、探知距離ではどちらもミサイルの射程を大きく上回っており大した差が無いものの、敵機との距離、高度、ベクトルといった複数の目標を演算し管理する必要のある複数目標の追尾が不可能というのは、F-15ならずとも、西側戦闘機と比較して明らかに劣っています。
度々比較にF-15を引っ張り出していますが、そのF-15クラスの大型戦闘機を探知できる距離は約150Km前後。F-5フリーダムファイターやMiG-21フィッシュベッドでは130Km前後。ラファールやタイフーン,F/A-18Eといったステルスを考慮されている小型マルチロールファイターでは100Km前後と、中射程ミサイル射程を大きく上回る距離で戦闘機を探知することが出来ます。
しかし、例外は真のステルス戦闘機F-117ナイトホークやF-22ラプター、そしてF-35JSF、これらのRCSは最高機密であるため概算に頼るしかありませんが(他の期待のRCSも概算ですが…)、F-15/Su-27のような大型戦闘機の数千分の1から数万分の1と推定されています。RCSが1/10000であった場合、これらの機体を探知できる距離は15Kmとなります。インドや中国への輸出仕様のZhuk-27では2目標同時追尾(TWS)が可能となりましたが、それでもアメリカ製レーダーと比較して大きく劣っているのは否めません。
最新型のZhuk-PH N011はSu-35,Su-37に試験搭載され、Su-30MKI、Su-30MkKなど最新のフランカーに搭載されているアクティブフェイズドアレイレーダーで、走査範囲はアジマス70,エレベーション+-35で縦横範囲こそ若干せばまりましたが、アンテナ径が大きくなったことから最大視程は400Kmにも達し、そして何よりも演算処理速度が飛躍的に向上したことから、スロットバックレーダーシリーズ最大のネックであった同時追尾機能が改良され、24目標探知8目標追尾と、アメリカ製レーダーに匹敵しうるTWSモードをサポートするようになりました。
N011にてF-15クラスを探知することのできる距離は260Kmにも及び、100Km以上も延長されています。レーダー視程の増大はR-37のような射程300Kmのミサイルを運用する能力をもたらしました。しかしながら、ステルス戦闘機を探知できる距離は25Km程度とどうしても極端に小さくなってしまいます。
また、対地レーダーモードも地図を作り出すSARーモードや動目標探知のGMTモードが追加・強化され地形追随レーダーモード可能となり、決して他国のレーダーに劣りはしない優秀なマルチモードレーダーとして仕上がっています。
N012/N014はエンジン間の「尻尾」に搭載されている後部警戒レーダーです。さすがにN012の走査距離は2-3キロと短いのですが、きわめて視認しにくい後方確認、いわゆる「チェックシックス」の補助として使用します。いくら後方警戒レーダーがあるからといってチェックシックスしなくてもよいというわけではありません。
そして、N014は走査距離が30〜40Kmと大幅に拡張され警戒だけではなく目標の追尾を行うことも可能です。R-73アーチャーを後方に向けて搭載することにより、シーカーとレーダーを連動させてロックオンし迎撃することが可能です。後方に回られても「目標」にすることが出来るのは世界でフランカーシリーズ以外に存在しません。