〜R-73(AA-11)〜
スケールは1m |
ロシア名 | :Р-73 (R-73) |
NATOコード | :AA-11 Archer(射手の意) |
1985年に配備され、「サイドワインダーの10年先を進むミサイル」とも言われるR-77アーチャーは通常のミサイルはフィンでミサイルの舵取りをしますが、R-73はフィンによる舵取りだけではなく推力偏向を持つため急激な方向転換が可能なため理論上180度ターンも可能となっています。2001年現在、米国では最新のAIM-9Xサイドワインダー2000を低率生産しているに過ぎず文字通り10年先んじた能力を持っていると言えます。アーチャーは赤外線誘導といっても赤外線画像認識のため、ただ高温の目標を追っかけていた従来のミサイルとは大きく異なりフレア耐性は非常に高く、航空機だけではなくAIM-120AMRAAMなども迎撃することが可能とも宣伝されており、まさに必殺のミサイルでもあります。
R-73アーチャーには大まかに分けて2通りの発射プロセスがあります。
1.
まず一つ目は直接照準。発射前にアーチャーの赤外線シーカーを作動させ、ミサイル自身にロックオンさせてから発射させます。また、IRSTと連動させることによりヘルメット装着式照準装置を身につけるパイロットが首を向ければ、最大で60度の円錐内の目標をロックオンすることが可能となります。最近ではボアサイト60度。いわゆるオフボアサイト能力を持つミサイルは珍しいものでは無くなりましたが、R-73は世界ではじめてその能力を得たミサイルでもあります。
ただし、ロックオンできる範囲=必中界ではないことに注意してください。60度ギリギリにもなれば命中率は極端に下がるでしょう。実用上は45度が良いところです(それでも結構無理がある)。これはイスラエルのパイソン4でも米国のAIM-9Xでも同じ事です。
この方法で発射した場合、最小射程は200mとも300mとも言われています。これは恐るべき事に機関砲による射程距離に匹敵します!
2.
もう一つは発射時に赤外線シーカーを作動させません。フランカーはレーダーで敵機をロックオンしR-73を発射し、そしてフランカーは刻々と変化する目標のベクトル情報から予想着弾点を計算しデータリンクによりアーチャーにアップデートして母機による誘導を行います。約10kmに接近するとR-73の赤外線シーカーが「覚醒」し、ミサイル自ら誘導する自律モードに移行します。また、途中でSu-27のレーダーロックが外れた場合は、最後にアップデートされた予想着弾点へと飛翔し、やはり約10km程度で覚醒。その後のプロセスはほぼ同じです。
2番目の方法で発射した場合、「短距離ミサイル」に分類するのをためらってしまうほどの初期のR-73Aは30km。最新のR-73Mでは40kmもの射程を持っているといわれています。…まるで、AIM-120AMRAAMや、R-77アッダーの終端誘導をただ赤外線誘導にしただけのような気がしないでも有りません。
F-22ステルス戦闘機はR-77アッダーのアクティブシーカーに探知される距離は400mとされています。この距離ではとても探知などは不可能です。しかしF-22は少ないとは言え現用機とさして変わらぬ赤外線放射がありR-73アーチャーならその能力をいかんなく発揮できることでしょう。…とは言うもののフランカーのスロットバックレーダーがF-22を捕らえることのできる距離はR-73の最大射程よりずっと短い距離ですが。
最後に、R-73は世界で初めて後方に発射されたミサイルでもあります。以前からこの話は聞いたことがあったのですがガセネタか何かとずっと思っていました。ミサイルは当然後ろ向きに搭載されており、後部警戒レーダーとの連動で発射されたとのこと。汚い写真ですが、Su-27より後ろに発射されたミサイルです。
第一次世界大戦航空戦史以来、後方に射撃できる戦闘機(もしくは改造されたもの)は必ずと言って良いほど「失敗」に終わっています。この後方発射ミサイルは後にどのような評価を下されるのでしょうか。
名称 | R-73M-1 |
用途 | 短距離空対空戦闘 |
重量 | 105キログラム |
全長 | 360センチメートル |
直径 | 17センチメートル |
操縦翼幅 | 51センチメートル |
弾頭 | 指向性破片威力弾頭7.4キログラム |
エンジン | 固形燃料ロケット |
搭載時G制限 | 8G |
誘導方式 | 中間:慣性・データリンク 終端:赤外線画像 |
攻撃可能高度 | 20〜23000メートル |
目標速度 | 2500Km/h |
照準見越し角 | 45度 |
命中率 | 0.6 |
最大射程距離 | 30キロメートル |
最小射程距離 | 0.2〜0.3キロメートル |